特集 Special Topics10: 『France Gall (フランス・ギャル)』
レコードの海外買付。響きはイイけど、実際にはむさ苦しくて、埃っぽくて、カビ臭くて、大変なものです。それが例えヨーロッパだろうと、どこの国に行っても同じようなもので、フランス、パリなんてお洒落な響きの都市に行ったって、レコード屋やその倉庫なんてモノはどこも似たり寄ったり。無機質にレコードがズラ〜っと並んでいるだけだったり、正直、並んでるくらいならまだマシ(笑)で、中には、レコードの海ならぬ、レコードの"沼"のような場所もあって、どこから手を付ければ良いのか、どこまでチェックしたのかも皆目つかないような混沌とした場所もあったりするんです。まさにレコードの"泥沼"とでも言うべき危険な場所であり、行為なのです。
ただ、フランスに買付に行くと、そんな殺伐とした空気の中でも、いつでも素敵な笑顔で微笑みかけてくれるカワイイ女の子がいます。彼女の名はイザベル・ジュヌヴィエーヴ・マリ・アンヌ・ギャル、またの名を『フランス・ギャル』。ジャケットの中で、いつもカラフルに着飾っていて、どんな髪型も可愛く自分のものにしてしまい、チャーミングすぎる笑顔と、その泣きぼくろが醸し出す仄かな憂い感のミスマッチがとにかくステキ。さらに、一度歌い出せば、豪華絢爛な演奏陣のバッキングに乗せ、愛らしい歌声で癒してくれるからこれまた最高なのです。何千枚と言う埃だらけのレコードをサクサクする中で、時折飛び出す彼女の笑顔に、何度も癒されて来たのは、言うまでも無い事なのです...。
1960年代のフランスが生んだ世紀のアイドル歌手『フランス・ギャル』と言えば、同じくフランスが生んだ才人、セルジュ・ゲンスブールが数曲を手掛けた『PHILIPS』レーベル在籍時の初期の楽曲群、例えば「Poupee de cire, poupee de son (夢見るシャンソン人形)」などのヒット曲を飛ばしていた頃の楽曲群が今でも良く知られています。1963年のデビューから1968年までの間は『PHILIPS』で多くのヒットを飛ばしている事からも、一般的にはこの時期が最も彼女が華やかだった時期と言われているようです。
幸いな事に、この頃の楽曲は殆どがCD化されていますが、この後に在籍した『La Compagnie』レーベルでは、期間こそ短いものの、やっぱりイイ曲を沢山残してます。特に有名なのは、何故か本気のブラジリアンを吹き込んでしまった名曲「Zozoi」、サンプリングソースとしても使われたグルーヴィーポップな「Baci Baci Baci」辺りでしょうか。アートワークもより大人っぽく進化していて、彼女の成長の過程として、とても重要な時期と言っても良いでしょう。さらにこの後、一瞬だけ『Atlantic』へと移籍しますが、ここでは7"を2枚吹き込んだだけで、ほぼ幻の活動期間になりました(後には再び『Atlantic=WEA』へ移籍します)。ただし、その2枚はよりソフィスティケイトされた彼女の歌声と楽曲が楽しめるので、惜しいところです。そして続くのは隠れた名曲の宝庫(と個人的に思っている)、1970年代前半の『Pathe Marconi(=EMI)』期です。この頃の楽曲は何故かあまりCD化されていないのですが、程よくメロウでアーバンなフレンチポップ~グルーヴの好曲が眠っている上に、どこか程よい大人らしさとか、そう言う魅力に溢れる時期でもあります。EMI期の音源はそろそろコンプリートでCD化して欲しいものです(なんならお手伝いしてもイイですよ〜)。そして彼女は、この後の彼女の音楽活動のパートナーであり、夫になるミシェル・ベルジェと出会い、1976年には彼と結婚し、また精力的に音楽活動を続けて行きます。そのサウンドは、より時代の波を取り入れたものへと進化し、ディスコ~アーバングルーヴ、もちろん80年代には80'sサウンドでヒットも飛ばしています。
中でもフランスでチャートの1位に輝いた「Il Jouait Du Piano Debout (彼は立ったままピアノを弾いていた)」は、エルトン・ジョンについて歌った名曲で、個人的には後期のフランス・ギャルのベストナンバーと思うほどの哀愁の名曲です。朝方のフロアでこの曲を聴くと、ホントに心地良いのです。他にも隠れた名曲が多く、幾つになっても瑞々しい彼女の魅力を感じる事が出来る時代です。この頃の音源は結構CD化されているので、触れてみる価値はあるんじゃないかなぁ...。
と言う事で、ここ日本でもデビュー当時から高い人気を誇り、1990年代には『PHILIPS』期の名曲達が再び脚光を浴びたフレンチポップのアイコン的存在、フランス・ギャル。その軌跡を、ディスク・デシネ的な解釈で軽くなぞってみました。音楽的にもヴァラエティ豊かに優れた楽曲の数々を残していますが、それに加えて容姿もちっちゃくてカワイイと来たら、これ以上言うことはありません。まさしく永遠のアイドルと言うべき存在です。
"フランス・ギャルちゃん、どうぞこれからも、薄暗いレコード屋さんの倉庫で優しく微笑みかけて下さいネ...。"
(丸山 雅生 / 2011.05.21)
→ディスク・デシネで取り扱っている France Gall 全タイトル一覧はコチラ
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特集Special Topics07: デザイナー『"ジャンニ・ロッシ" (Gianni Rossi)』
ひつじの形の小さなUSBフラッシュメモリ。
パソコンからにょきっと飛び出したそのひつじは、口角をむにっと上にあげて笑顔を見せており、
とてもかわいらしい。
体にまとった赤黒のブロックチェックの『あたたかそうな』衣には、"WOOLRICH"と書かれている。
そう、この製品は、アパレルメーカー"WOOLRICH"社のプロモーションのためにつくられたもの。
"彼"はこんな小さな製品にも、そのブランドの特徴・素敵さを的確に、そしてユニークに、
ぎゅっと閉じ込める力を持っているのだ。"
既にディスク・デシネではおなじみ、Paolo Scotti氏が手がけるイタリアの優良レーベル"Dejavu"。
実は先述の"ひつじ"をデザインしたGianni Rossi(ジャンニ・ロッシ)氏が、ロゴマークをはじめ、
そのアートワークのほとんどを手がけている。
イタリアン・ジャズ界の宝ともいえる重鎮たちの輝く音色、そしてその風貌を
よりいっそう深く艶やかなものに魅せ、
あるいはクラブ・ジャズ界の若き人気者たちが生み出す音楽の、華やかさや切なさを、
アートワークの中にきちんと落とし込む。そのセンスに裏切りはない。
また、ダフト・パンクやビョーク、ホワイトストライプス、ジャスティス、コーネリアス...など、
今をときめく大物アーティストたちの、オフィシャル・ツアー・ポスターも多数製作している。
いずれも思わず「かっこいい!」と声をあげてしまいそうな、クールさと鮮やかな色使い。
そして、それぞれのアーティストが持っている個性にぴったり&しっくりくるのだ。
音楽の仕事だけでなく、映画やCM、アパレルなど、数え切れないアートワークを担当しているジャンニ。
現在はさらなるクリエイティブな活動をめざし、活動の拠点をイタリア・ボローニャから、
気鋭のデザイナーたちが多く集う、ドイツ・ベルリンへと移している。
きっと彼は、今日も何か素敵なものを作るために、スタジオで製作していることだろう。
彼の手がけた、新しいアートワークを目にするのは、きっとそんな先の話ではないはずだ。
(土本 育子 / 2010.01.16)
(※契約の都合上、ウェブショップを通じての販売は出来ませんが、ビッグ・アーティストの
オフィシャル・ツアー・ポスターも、店頭には入荷しております。
詳細をお知りになりたい方は、お問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。)
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