特集Special Topics05: レーベル『Deja Vu Records』

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もしあなたが1960年代~70年代にイタリアで産み落とされた素晴らしい映画音楽の数々、あるいは"イタリアン・ジャズ"なんて言葉に興味があるならば、きっと一度は彼の名前を耳にしているだろう。数々のイタリア・サントラ/ジャズの名リイシューを筆頭に、自身が手掛ける『idea6』や『Fabio Nobile』などの気鋭のアーティスト/グループを擁するイタリアのレーベル『Deja Vu Records』のオーナー、"パオロ・スコッティ(Paolo Scotti)"と言う人物の名を...

ここ日本での彼に対するイメージは、やや"イタリアン・ジャズ"と言うキーワードに偏重している感もあるが、彼のキャリアは、1970年代のディスコ・ムーヴメントに始まる。若干10代にしてディスコDJとしてデビュー(当時のDJセットの録音も現存)を果たした彼は、リアルタイムで数々の音楽トレンドの変遷を体感する過程で、また自ら凄腕の中古盤・ディーラーとして実績を重ねる内、自然と見いだしたのであろう。優れた映像美、そして陽気な国民性を感じさせるコミカルで、時にエロティックな "イタリア・B級映画"の数々に収録された素晴らしい音楽達、80年代のイタリアのアンダーグラウンドDJ達が発掘して来た、ディープな自国のジャズ、あるいはラテン、ブラジルの影響を受けたイタリアンミュージック、そして自らのルーツとも言える、ディスコ、ダンスミュージックのよりコアな世界を...

イタリア・サントラに関しては、何と言っても再評価の火付け役として高名なコンピレーション『easy tempo』シリーズが有名だ。1990年代に登場した初期シリーズの選曲はパオロによる物(ちなみに、今をときめく『Scheme』の最初期のコンピ盤も彼の選曲)で、現在に至るまでのシーンの隆盛を見れば、彼がシーンに与えた影響の大きさが伺い知れる。また、後に自らが中心となり『Studio Uno/Easy Beat』として、よりコアな作品の再発とリミックス(この当時はリミキサーとしても、かなり多くの好仕事を残している)を同時に行うと言う、斬新なアイデアも披露している。さらにその幅の広がりを感じさせるのが、サントラ群に付随して語られることも多い、数多のライブラリー音源、イタリア産のボサノヴァ~サンバなどのブラジル音楽の発掘に、南米・ヴェネズエラが生んだ天才コンポーザーにして、独自のラテンリズム"オンダヌエヴァ"の生みの親、アルデマーロ・ロメロ、フランク・フェルナンデスの再評価・リイシュー群。少なくとも、パオロが居なければ、"オンダヌエヴァ"なる言葉が(例え一部とは言え)音楽マーケットで、これほどに行き交うことは無かったかも知れない。そして、その発掘作業の中で、自然と比重が増していったのが、イタリアン・ジャズへの大いなる評価であろう(当然の帰結とも言えるが...)...

"現在の活動の中心となる『Deja Vu Records』からリリースされている、知る人ぞ知る激レアサントラ盤、『Gli Arcangeli』、『Interrabang』などは、イタリア・サントラ~ジャズとの関連性も密接な作品であり、彼の活動の軌跡を辿る上では、非常に重要な位置づけにある。
そして本人も懇意にする、ジャンニ・バッソ、ディノ・ピアーナ等の、往年のイタリアン・ジャズ界の重鎮達と、気鋭のピアニスト、アンドレア・ポッツァを中心とする『idea 6』での活動は、新旧を音楽への"情熱"で繋ぐ、彼なりのイタリアン・ジャズへ究極のリスペクトなのかもしれない。
そのサウンドクオリティの高さは、パオロの"情熱"その物と言えるだろう。さらには、Basso-Valdambriniによる1960年代の一連の名作群のリイシューを同列でやってのけるパワー、思い入れの強さは、彼が行うプロデュース・ワークのブレの無さ、芯の強さを指し示している。"

"僕が個人的に知るパオロ・スコッティと言う人物は、その大きな体で、愛猫を撫でながら大声で楽しそうにいつまでも音楽の話をする生粋の音楽好きである。僕と同じように、彼は"彼が"好きな音楽に対して"情熱"的なのだ。彼の手掛けて来た数多の仕事は、多様なようでもそのテイストにおいてはシンプルでいてブレが無い。そして最近彼が手掛けている"コズミック・ディスコ"や、未だアナウンスされていない南米出身のSSWの歌声を聴けば、パオロの音楽的興味の広がりが、まだまだ途上であることを知ることができる。

これだけの大仕事を残しても、未だ尽きない"情熱"が、より多くのリスナーに届くことを切に願います..。.
(丸山 雅生 / 2009.03.22)

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2010年5月28日 20:02

特集Special Topics04: レーベル『L'arome production』

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誰も知らない曲ばかりだけれど、そのクオリティは、まさしく国宝級。そんなフレンチ・ブラジリアンの知られざる名曲の数々をセレクトしたコンピレーション『ブラジリッシモ』。ここ日本でも、輸入盤ながら大型CDショップなどでヒットを記録したこの作品を記憶している人は多いかもしれない。その話題性や流行も要因の一つかも知れないが、きっと今でも『ブラジリッシモ』を手放さずに聴き続けている方が多いとすれば、収録楽曲のレアリティ云々の前に、その内容の素晴らしさ、作り手の真摯な音楽への情熱がダイレクトに伝わるから、と言う理由からでは無いだろうか。

今回ご紹介するフランスのインディ・レーベル『L'arome Production』こそが、そのリリース元であり、同社のオーナー、David Jallouxがその全てのセレクション、製作を手掛けた人物である。フランスでは"トップ"と言われるレコード・ディーラーとしても、知る人ぞ知る人物である彼が手掛けるレーベルとあれば、そのクオリティは当然の如く最高のレベルにあり、リリースする作品のセレクション、ポリシーも相当なモノである。無論、彼が手掛けたカタログを眺めれば、簡単に分かることではあるが。

知られざる自国のブラジリアン・ミュージックにスポットを当てることから始まり、ジャンルの垣根を越え、ライブラリー、ジャズ、果ては、エチオピアン~アフリカン・ミュージックに至るまで、その一貫したテイストに彩られたカタログの数々は、リリースのペースを落とした現在でもそのクオリティを保ち続け、リリース・インフォが届く度に我々を驚かせてくれる。堅実なセールスをベースに商業的なリリースを続ける事も重要ではあるが、まず自らの音楽的な興味をしっかりとした形に置き換え、マーケットに提案し、プロップを得る。コレこそが真の音楽好きによるレーベルであると、自ら体現しているかのようなレーベル活動には頭が下がりのみである。

そんな『L'arome Production』の現在も入手可能なカタログは以下の通り。今後は、よりエチオピアン・ミュージックのカタログが増える予定で、見た事も聴いた事も無い極上のグルーヴが、まだまだ『L'arome Production』経由で、日本に紹介されそうな勢いである... 
(丸山 雅生 / 2008.06.27)

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殆どのカタログは弊店独占流通となっておりますので、お取り扱いにご興味がございましたら、
お気軽に『ディスク・デシネ・ディストリビューション』までお問い合わせ下さい。


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2010年5月28日 19:50

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