特集 Special Topics09: 『Plexus』 エロとアート、そしてユーモアの融合"を実現させたヴィンテージブック
"Plexus"
その表紙からしてただならぬ雰囲気が漂ってくるアートブック『Plexus』は、
1966年から1970年にかけて、フランスのN.M.P.P.社より出版されていた、
一風変わった雑誌です。
全37巻を通じてテーマとしていた(と思われる)のは、エロとアート、そしてユーモア。
レコードの7インチサイズという、やや小ぶりな本の中には、
ユニークでチャーミングな漫画から、シュールなイラスト、美女のヌード写真、
硬めの読み物...と、実に様々なテイストのものがつめこまれています。
※記念すべき第一号のカバーデザインは真っ赤。なんとなく、意気込みのようなものを感じます。
Federico FeliniやAlan Watts等のインタビューや、あのSam Haskinsによるヌード写真、
"サントロペのお嬢さん"でおなじみのGenevieve Gradのセクシーグラビアなど、
惜しみなく著名人たちが登場するのもさることながら、
無名と思われるセンスあふれるアーティストやクリエイターが登場し、
とことんまじめに"エロ"と"アート"の融合を、この本の中で実現し、表現しています。
また、広告スペースや、コラム的な読み物の小さな挿絵までもが、
ユニークでチャーミング、そしてちょっとエッチ...と、まったく手を抜かれていません。
どの号においても、ページを気まぐれにパラパラとめくるだけで、
その一枚一枚のページの構図に、細かくこだわっていることが伝わってきます。
そこには、フランス人の究極の美意識が詰め込まれているのです。(と、感じます。)
発行されていた4年間の中に生み出した数々の表現物は、
人が生み出した『芸術』という世界の未知数の楽しさと、
人が持って生まれた本能を刺激するツボのようなものを、
無邪気に感じさせてくれる素敵なものばかり。
Plexusが残してくれた独特の世界を、その1ページ1ページから感じてみてください。
(2010.07.13 土本 育子)
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特集Special Topics08: 『デッドストック (Dead Stock)』
[デッドストック(Dead stock):売れ残り品、長期間倉庫に置かれていた商品を指す]
当店ディスク・デシネでは、2002年の開店以来、世界中の国々から数多くの貴重な"デッドストック"のレコードを発掘し販売して来ました。十数年も前の貴重なレコードが未使用の状態で手に入る。中古盤ですら中々見つける事ができないレア盤が、素晴らしい状態で手に入る。中古レコードが大好きな方達にとっては、まさしく夢のような状態ですね...。
そんな訳で、きっとこのコラムをお読みの方にとってこの"デッドストック"と言う言葉は、既に耳慣れたキーワードの一つとなっている事でしょう。
ただこの言葉、上記の定義の通り、かなり広義なモノです。そして、星の数ほどリリースされて来たレコードのタイトル数に比例して、と言うよりは、その内容や当時のそれらの作品に対する評価の結果の一つとして"デッドストック"なる状態が生まれる訳ですから、当然に、当時全く人気の出なかったモノ、売れなかったモノなど、その中身も色々です。
長らく海外に出向いて、色んな場所で沢山のレコードを掘って来た経験から言えば、過去に遭遇して来た"デッドストック"の95%は、残念ながらどうしようもない"ダメ"レコード達でした。『もしこの盤の中に1曲でも良い曲があればなぁ』なんて僅かな希望も容赦なく断ち切られてしまう位に"ダメ"なモノばかりなのです、残念ながら(笑)。
そんな中、大量のレコードが残る田舎の倉庫やホールセール、古道具屋、あるいは既に活動を休止しているインディレーベルにアタックし、さらに激選に激選を重ねた結果、お客さまの手に届いているのが、今までディスク・デシネで仕入れて来た"デッドストック"の逸品達なのです。
気になるところかも知れませんが、ディスク・デシネで"デッドストック"と、定義(と言うほど立派では無いですが...)付けているアイテム達は、通常こんな感じです。
1.オリジナル盤、あるいは少なくとも最近のプレスでは無い事
2.未使用品である事(ただし、経年過の傷みは許容する(当たり前の事ですが))
3.まとまった在庫として入荷する事
等です。
実は、少数で見つかるアイテムというのがかなり多くて、その場合当店では、"デッドストック"としては扱わない場合も多いです。例えば、『シールド状態で入荷しました』とか、『恐らく未使用の美品が入荷しました』と言うような表現にしています。例えば、ある商品が"デッドストック"化する場合、意外にも色んな状況(ただの売れ残り、レーベルのストック、あるいは卸会社に残された返品の山、とか色々です)が想定されるので、ハッキリとした出所や状況が分からない場合には、大袈裟な表現/誇張は避けるように心がけています。
以前と違い、1960年代~80年代の良質の作品の"デッドストック"が見つかる機会は殆どありません。そもそも、誰でも知っている人気レコード、レア盤、高額盤の類いは既に掘り尽くされ、今では、よほどの(生きた)情報量、行動力(と、情熱とか?)が]無ければ、滅多な事ではイイ作品には出会えません。
残念ながらこれは、"デッドストック"と言う特定のキーワードと言うよりむしろ、古いアナログ盤と言う、現在では既に殆ど生産されていないメディア、全てに当てはまる事です。そんな訳で、この"夢"のような、状態が稀に実現した時には、どうぞその機会を逃さないよう、アンテナを張っておく事をオススメします。
もちろん、ディスク・デシネでは、この"夢"のような状態を皆様にお届けすべく、微力ながらも今まで培って来た経験やコネクションを活かし、さらなる"発掘"努力していきます!
※このコラムは、内容からも推測可能な通り"アナログ盤"に特化して書いています。
もちろん、CDや他のグッズにだって"デッドストック"という概念は該当します。
(丸山 雅生 / 2010.03.22)